情報公開文書 ヒト血液検体を用いた臨床研究実施についてのお知らせ
京都大学医学部附属病院泌尿器科では、以下の多施設共同臨床研究を実施しております。
この研究は、下記の先行研究で書面同意のもとに患者様から採取された血液(血漿)を用いて、前立腺特異抗原(PSA)蛋白質に付加された糖鎖という修飾構造について調べ、過去のカルテの臨床情報と照合するものです。本研究のように予め先行研究で検体を別の研究で二次利用することについての同意を得られている患者様の検体を用いた研究は、厚生労働省の「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」の規定により、対象となる患者さんのお一人ずつから直接同意を得るのではなく、研究内容の情報を公開することが必要とされております。また、本研究は京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部附属病院 医の倫理委員会の審査を受け、研究機関の長の許可を受けて実施しているものです。この研究に関するお問い合わせなどがありましたら、以下の「問い合わせ先」へご照会ください。
研究計画名
PSA G-INDEX検査の前立腺癌診断における有用性の検証
検体二次利用の対象となる先行研究
実施機関:
京都大学医学部附属病院、岩手医科大学附属病院、秋田大学医学部附属病院、東北大学病院、筑波大学附属病院、東海大学医学部附属病院、関西医科大学附属枚方病院、兵庫医科大学附属病院、香川大学医学部附属病院、宮崎大学医学部附属病院、東京慈恵会医科大学附属病院
先行研究計画名:「遺伝子多型を用いた前立腺癌診断マーカーの開発」
対象となる試料・情報の取得期間:試料(血液検体)については2017年3月31日までに収集されたもの、情報については2019/12/31までに収集されたもの。
主たる研究機関
京都大学大学院医学研究科泌尿器科学講座
研究責任者
後藤崇之(京都大学大学院医学研究科泌尿器科講座 講師)
住所:〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
研究実施期間
研究機関の長の実施許可日から2025年12月31日まで
共同研究機関および代表者
公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター がんオーダーメイド医療開発プロジェクト
プロジェクトリーダー 植田幸嗣
株式会社LSIメディエンス 医薬品分析部長 上田哲也
研究の意義・目的
前立腺特異抗原(PSA)は前立腺癌の診断マーカーとして知られていますがその診断精度は十分とは言えず、日常診療では侵襲的な前立腺生検が多くの非癌患者に対して行われています。最近、がん研究会の植田幸嗣博士らは血液中のPSAに付加されている糖鎖という蛋白質の修飾構造を最新の質量分析機器を用いて詳細に解析した結果、前立腺肥大症などがんではない患者さんの血液中PSA上ではほとんど検出されず、前立腺がん患者さんのPSAにおいて特異的に付加頻度が増加する糖鎖構造群を発見しました(マルチシアリルLacdiNAc構造)。そしてこの前立腺がん特異的糖鎖構造の存在量から新しい診断アルゴリズム(方法)「PSA Glycosylation Index (以下PSA G-Index)」を作製し、PSA検査で陽性(4 ng/ml以上)となっても実際は前立腺がんではない患者さん(偽陽性)と真に前立腺がんである患者さんを極めて正確に識別することに成功しました。また、前立腺がんの病理学的悪性度と特定のPSA上糖鎖の存在量が相関することから、血液検査によって前立腺がん悪性度の推定を行える可能性があることも判明しました。今回の研究ではこのPSA G-indexが将来的に臨床検査として有用であるかどうかを検証するため、前立腺生検を受ける前に採血を行いその後に全例で前立腺生検をしている「遺伝子多型を用いた前立腺癌診断マーカーの開発」研究で集めた血液(血漿)を用いて解析を行います。
PSA-G indexでの高精度の診断が実用化されれば、PSA検査偽陽性に伴う不要な侵襲性の高い精密検査(前立腺生検)を回避でき、患者さんの肉体的、精神的苦痛が軽減されるだけでなく、医療費の大幅な抑制も期待できます。
研究の方法
(対象となる患者さん)
PSA高値などの理由で前立腺生検が必要となり過去に主たる研究機関もしくは共同研究機関で上記の先行研究に書面で同意し血液検体採取を受けた方。ただし、検体の将来的な研究における二次利用を拒否された方は除く。
(解析方法)
上記の研究で採取された血漿は理化学研究所統合生命医科学研究センターで保管されています。本研究ではこのうち、前立腺癌が見つかった患者さん、見つからなかった患者さんの血漿を500症例分ずつ用いてがん研究会および株式会社LSIメディエンスで質量分析装置という機械によりPSAに付加された糖鎖の解析を行い、その結果に基づくスコア(PSA G-index)を算出します。解析結果は過去のカルテに記載された臨床情報を参照して前立腺癌との関連について検討します。
(利用するカルテ情報)
生検時年齢、前立腺癌の有無、家族歴、診断時グリソンスコア(前立腺がんの病理学的悪性度の指標)、PSA、診断時ステージ(がんの進行具合)
外部への情報提供
患者さんから得られた情報は、お名前や生年月日など個人を特定できる情報を含めず、研究用の識別番号を付けてデータを取り扱います。識別番号と個人を結びつける対応表は、当院で厳重に管理され、院外に提供されることはありません。個人を特定できないようにした(匿名化された)情報は研究責任医師からがん研究会およびLSIメディエンス社に報告され、PSA G-indexの算出結果と照合されます。
この研究結果は、学会、医師の研究会、学術雑誌等で公表されたり、インターネットで公表されたりすることがあります。また、この研究結果は、医学研究のため研究者に提供され利用されたり、新薬や治療法の開発のために下記の研究依頼者に提供され利用されたりすることがあります。ただし、いずれの場合でも、患者さんのお名前は取り扱わず、個⼈を特定できないように情報を匿名化しますので、患者さんのプライバシーは守られます。さらに、患者さんの医療記録に携わる者には守秘義務が課せられていますし、個⼈情報保護法に則って、患者さんのお名前や病歴等の個⼈情報が外部に漏れることがないように厳重な対策をとっております。
個人情報の保護について
利用する情報からは、お名前、住所など、患者さんを直接同定できる個人情報は削除します。また、糖鎖解析結果はLSIメディエンス、がん研究会および京都大学泌尿器科研究室のコンピューターで厳重に管理します。臨床情報はLSIメディエンス、がん研究会および京都大学泌尿器科研究室のコンピューターで厳重に管理します。糖鎖解析結果と個人情報の削除された臨床情報の対応表は京都大学泌尿器科研究室で管理します。各研究成果は学会や学術雑誌で発表されますが、その際も患者さんを特定できる個人情報は利用しません。本研究で扱われている個人情報については他の研究対象者の個人情報および知的財産の保護等に支障がない範囲内で開示を希望することもできます。
本研究の資金源(利益相反)
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの研究費で行われます。また、本研究はLSIメディエンス社との共同研究であり、資金は同社からも提供されます。ただし、資金提供者の利益を優先させて研究の公正さを損なったりすることはありません。本研究における当院の研究者の利益相反については、「京都大学利益相反ポリシー」「京都大学利益相反マネジメント規程」に従い、「京都大学臨床研究利益相反審査委員会」において適切に審査しています。学会発表や論文公開に際しても、当該資金に関する情報を公表し、透明化を図ることとしています。
試料および診療情報の利用に同意されない場合
本研究での診療情報の利用にご了承いただけない場合には研究対象といたしませんので、下記の連絡先までお申出ください。その場合でも患者さんに不利益が生じることはございません。
今後の血漿検体の保管について
本研究で使用する血漿検体は現在、「遺伝子多型を用いた前立腺癌診断マーカーの開発」研究の共同研究機関の理化学研究所にて保管されていますが、本研究で解析後の余った検体は全て京都大学泌尿器科研究室で保管します。
その他
本研究の対象となった場合にも薬剤や検査の負担は通常の診療と同様です。
また謝礼のお支払いもありません。
試料および情報の管理者
京都大学大学院医学研究科泌尿器科 助教 住吉 崇幸
本研究に関する問い合わせ
〒606-8507
京都市左京区聖護院川原町54 京都大学大学院医学研究科泌尿器科
後藤 崇之(ゴトウ タカユキ)
TEL: 075-751-3337 / FAX: 075-751-3740
(機関の窓口)
京都大学医学部附属病院 臨床研究相談窓口
(Tel)075-751-4748
(E-mail)ctsodan@kuhp.kyoto-u.ac.jp